屋根の1次防水と2次防水
屋根に葺いている屋根材(瓦・スレート・金属系)で完璧に雨漏りを防いでいると思われている方が多いと思います。それは少し間違っています。厳密に言えば大方を防いでるという事が正解です。屋根材にクラックがあるなどは当然ですが、気象条件や経年劣化等で知らない内に雨水が屋根材の中に入るという事が実はあるのです。
日本瓦屋根を想像してもらえば分かりやすいのですが、瓦を上に重ねて瓦を葺いていきます。その瓦の重ね部に隙間があります。普段なら水が上から落ちますが、台風時などの強風で建物に向かって吹いてくる向かい風などの時には、その隙間に水が逆流して入ってくる事があります。ですので屋根材のみで完璧に雨漏りを防いでるとは言えません。
■1次防水と2次防水という考え方
では、雨漏りを完璧に防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?それが、「1次防水・2次防水」という考え方です。1次防水=屋根材で最初の雨を防ぎます。それでも何かしらの影響で侵入してきた雨水を2次防水=防水ルーフィングで防ぐ。この1次防水.2次防水の仕組みが雨漏りを完璧に防ぐ方法になります。少し詳しく次項で説明していきます。まず、分かりやすい様におおまかではありますが基本的な屋根の下地構造を説明していきます。
■屋根の構造
1,下地 コンパネ貼りまず最初に屋根の下地になるコンパネを貼っていきます。厚み9mmで貼っている所もあるようですが強度を強くする為に通常は12mmのコンパネを貼るのが一般的です。この時に隙間なく貼っていく事が大事です。通常は大工の仕事になります。
2,防水ルーフィング貼り
下地のコンパネに防水ルーフィングを貼ります。これが2次防水になります。この時の注意点はルーフィングの重ねの部分は上下で100mm以上、左右で200mm以上を重ねて貼るのが大切です。そうする事で重ね部分からの毛細管現象による漏水を抑えれるからです。この防水ルーフィングをタッカー(ホッチキスの大きなもの)で止めていきます。防水ルーフィングもコスト安~コスト高のものまでありますが、防水ルーフィングの片面が接着するタイプのものがあり、それが最もおすすめです。仕上げ葺きの材料は葺いた後の経年劣化を塗装でリカバー出来ますが、ルーフィングは出来ないのでここはコストをかけても良いかと思います。この他にも立ち上がり部分・取り合い部分・谷部分・棟部などは特に雨水が侵入しやすいので各々に応じた貼り方があります。経験豊かな板金屋さんの腕の見せどころでもあります。
3,仕上げ葺き (写真では平型スレート葺き)
防水ルーフィングの上に仕上げの屋根材を葺いていきます。これが1次防水になります。屋根材は瓦(日本・洋)、スレート・金属系など多種多様です。以前は平型スレートが多かったですが、最近では金属系が多くなってきています。この様にして屋根を葺いていくのが1次防水・2次防水の考え方です。
■1次防水と2次防水のまとめ
1次防水・2次防水の考え方を写真で見て頂ければ分かりやすかったと思います。最初に屋根材で雨水を防ぐのが1次防水、中に入ってきた雨水を防ぐのが2次防水となります。この両方で雨水を防いでいます。ルーフィング貼り項目でも記載しましたが、見えないルーフィングの役目は大変大きいのです。
■屋根塗装の重要さ
ここで1次防水の屋根材の劣化を防ぐために塗装がとても重要になってきます。というのも、屋根から雨漏りがあった場合は大抵ルーフィングが痛みきって雨水を防水しきれなくなっているケースが多いのです。ルーフィングが本来の防水機能を発揮してくれていれば雨漏りはしませんので。
防水ルーフィングは屋根材の下にあるので紫外線で劣化する事はありません。劣化するのは雨水が多くかかっているからです。その原因は屋根の葺き方を間違えていたり、屋根材が傷んで雨水を通すようになってきてるからです。前者は取り合い部分などの難しい箇所に多く、後者は塗装などのメンテナンスをしていなかった時に多いです。
スレートなどはセメントを圧縮した上に塗膜がかかっているものですので、その塗膜が紫外線と雨水で劣化してスレート自体剥き出しになる様な感じになって水を通してしまう様な状況になっていたり、金属系なら錆びて穴が開いていたりします。
もし屋根から雨漏りがおきた場合はルーフィングの張替えが必需になる事もあるので大変コストがかかります。要は屋根の葺き替えになります。ですので、そうなる前に屋根を塗装する必要があるのです。葺き替えに比べて塗装の方がコストを低く抑えれますので。あまりにも劣化して変形して重ね部の隙間が大きく開いた屋根材の上に塗装をしても綺麗になるだけで隙間を元に戻す事は出来ません。こうなれば葺き替えしか方法はなくなりますので、早めの屋根の塗装がとても大切です。